ななはち文庫

自作の小説やコラム、日記やエッセイなどの文藝倉庫。

短編小説

小説「間違いたい人」

「アニメなんてくだらん。お前は普通に進学するべきだ。えぇ、いや、せねばならない。」――――まるで担任が世界を代表して僕を批難しているようだった。客観的に見ればこの表現は大袈裟に見えるかもしれない。しかし、当事者の僕にとっては、なんて等身大の表…

小説「社畜のお正月」(4116字)

あけましておめでたくなんかない。「新しい朝が来た」「希望の朝だ」もう僕には、夏休みの早朝に聞けるような健康的な歌詞文句が心に響くような精神的純粋さは無かった。きっとみんな世の中正月ムードで、テレビを見ればワハハして、炬燵に入ればヌクヌクし…

短編小説「きをてらう」

僕の名前は寺煎 訊(てらい じん)。でもそんなことはどうでもいい。どうしてだ?何で皆、奇を衒わないんだろう?若い内は「衒う」べきだと思うんだけどなぁ。だって、「衒」って字の意味は、『才能を顕示すること』『力を見せつけること』それいつも皆やっ…

短編小説「こころ」ころころ、ろここちゃん

私の名は神林ロココ。本名である。親が考えて考えて考えて考えて、この名前を付けてくれた。世間は私のことを、俗に「DQNネーム」、と呼ぶ。価値観を押し付けるな。私は私の意思でこの名前を肯定しているのだから問題なかろう。親が価値観を押し付けている…

短編小説「Neon」

秋が運んでくるのは哀愁の風だけではない。受験生の葛藤と、それぞれの進路だ。高校三年生の夏葉は、登校しながらその坊主頭を悩ませていた。夏葉という名前ではあるが、男である。秋らしい晴天の中、夏葉はとぼとぼと歩く。(志望理由書…なんて書こうか…)…